家族と厄災

信田さよ子

2023年9月刊行

四六判並 192頁

定価(本体1,900円+税)

ISBN978-4-910790-11-4 C0095

 

“危機の時代”の家族のゆくえ

パンデミックは何をもたらしたのか。家族で最も弱い立場に置かれた人々の、手さぐりと再生の軌跡をみつめた、ベテラン臨床心理士によるエッセイ。リアルなエピソードと実践経験から生まれた知見をもりこんだ、時代の荒波を生きぬくための必携書。



非常事態の水面下で起きていたこととは。新たな危機がやってきたとき、起こりうることとはーー。

社会の変化を視野に入れ、危機の時代の家族のありようを鮮烈に描写したエッセイ。

 

 

目次

 

まえがき
 
◆第1章 KSという暗号
カウンセラーを査定する
不穏な母
いつも誰かを背負って生きる
「かわいいよ」
フラッシュバックと痛み
私の手痛い失敗
侵入する記憶

◆第2章 飛んで行ってしまった心
何もなかったかのように
文字で埋めつくされたノート
不思議な感覚
私は存在している
KSがなくなる
言葉にこだわりけるつづけること

◆第3章 うしろ向きであることの意味
「未来志向」という強迫  
whyからhowへ
ナラティヴセラピー
トラウマへの新しいアプローチ
「渦中」の危機と「その後」の危機
 
◆第4章 マスクを拒否する母
不穏な視線  
心理的に距離をとる  
母の遁走  
華麗な日々が暗転  
あふれる感情

◆第5章 親を許せという大合唱
四半世紀後のデジャヴ
「常識は変わらない」
加害と呼ぶことを許す言葉
あやまろうとしない親
戦うべき相手はだれか

◆第6章 母への罪悪感はなぜ生まれるのか
クライエントの三分の二は家族問題を抱えて来所する
名づけることの意味  
罪悪感が生まれる背景  
「あなたのために」という偽装された自己犠牲

◆第7章 「君を尊重するよ(正しいのはいつも俺だけど)」
孤立無援の日々
在宅勤務の夫
妻の納税額に衝撃
「君が望むなら」の本当の意味
責任転嫁と定義権の収奪
予期せぬ力関係の変化  

◆第8章 私の体と母の体
予知夢  
コロナ禍の葬儀
三世代の流れ
「私以外の誰がいるんですか?」
主客の逆転――かけがえのない存在になる
ケアをしながら、得られなかったケアを受ける  

◆第9章 語りつづけることの意味
玄関の向こうは人権のない世界
世代間連鎖への恐怖
抵抗できない強い磁力
見知らぬ人に手を差し伸べるように
「仲間」の存在
語りつづけること  
見知らぬ人になって母も変わった
代弁するということ

◆第10章 むき出しのまま社会と対峙する時代
時代の空気がわからなかったあのころ
重層的厄災
誰かに起きた暴力が、自分の痛みをよびさます
社会・国家とむき出しで対峙する時代

◆第11章 慣性の法則と変化の相克 ――一蓮托生を強いられる家族
非日常の日常化
カウンセリングが成立しなくなる?
変わりたくない社会が生むひずみ
例外として特権化される家族
DV相談件数と女性の自殺者数の増加
弱者化された主婦と女子高生
そしてウィズコロナの時代に
 
◆第12章 現実という名の太巻きをパクっとひと口で食べる
向田ドラマの男たち
「届かなさ」が人気の秘密
シンポシカン
盤石な地層のような現実
先端とは何か
コロナ禍の家族

あとがき――忘れないために、そして未来のために  

主要参考資料一覧