悼むひと 元兵士と家族をめぐるオーラル・ヒストリー

遠藤美幸

2023年11月刊行

四六判並 248頁

定価(本体2,300円+税)

ISBN978-4-910790-15-2 C0095 

 

20年以上にわたる聞き取りの記録

戦場体験者の証言が浮かび上らせるのは、歴史的事実だけでない。話せないこともあれば、伝えたくても伝わらない真実もある。戦没した仲間への哀惜。「勇ましい」戦後右派への不信…。ビルマ戦研究者であり、戦友会、慰霊祭の世話係でもある著者が、20年以上にわたる聞き取りをとおしてつづった、 “痛み”と“悼み”の記録。


 目次

 

◆第1章 九八歳の「慶應ボーイ」 
「知らせたい人リスト」 
十人十色の戦争体験 
徴兵猶予停止と学徒出陣 
軍に嫌われた!? 福澤諭吉と経済学部 
「出陣学徒壮行会」をサボって何処へ 
「出陣学徒壮行の地」の碑の建立 
「戦争はいけません」 

◆第2章 初年兵の「ルサンチマン」 
「ジャワは天国、ビルマは地獄、生きて帰れぬニューギニア」 
拉孟戦とはなにか? 
「安はやすやす祭り上げ、龍と勇がしのぎを削る」 
初年兵の「ルサンチマン」 

◆第3章 永代神楽祭と「謎の研究者」 
戦友会の代表世話人に 
永代神楽祭とは? 
引き継ぎ業務 
遺族同士を繋げる「ボンドガール」 
戦場体験を聴くということ 

◆第4章 戦場と母ちゃん 
老兵からの電話 
手渡されたノートの切れ端 
母ちゃんのバカ 
千人針 
初年兵教育 
母ちゃんを思う気持ち 
晩年の老兵たちの言葉 
最期の言葉は「お母さん」 

◆第5章 一〇一歳の遺言 
一九四一年一二月八日「開戦」 
コタバル敵前上陸
シンガポール攻略 
死んだ人にも格差 
インパール作戦からの敗退 

◆第6章 ビルマ戦の記憶の継承――元日本兵の慰霊を続ける村 
「戦友愛」と遺骨収集 
ウエモンが見た戦場のリアル 
慰霊に人生を捧げた中隊長 
ウェトレット村での戦闘 
元日本兵の慰霊を続ける村 
ミャンマー贔屓
ビルマは「親日的」なのか 
ミャンマー国軍と日本 

◆第7章 音楽は軍需品なり――朝ドラ「エール」とビルマ戦線 
古関裕而のもう一つの顔 
南方「皇軍慰問団」と拉孟
「ビルマ派遣軍の歌」 
音楽家の戦争加担 
「音楽は軍需品なり」 

◆第8章 いま、戦争が起きたらどうしますか? 
元陸軍中尉の問いかけ 
最後に愛が勝つ 
「勇ましい」戦争非体験者たち 
不戦を訴える元兵士たち 

◆第9章 戦没者慰霊祭に響き合う「ポリフォニー」 
遺族間の「温度差」 
戦死した「貴方」の無念を伝えます 

◆第10章 やすくにの夏 
御明大作戦 
一〇〇灯の御明 
靖国参拝に訪れる「ふつうの人たち」
みんなで参拝すれば怖くない 
美化された「英霊」 
元特攻兵からの手紙 
特攻と桜│裏の真実 
戦没者を悼む場所 
 
◆第11章 戦友会「女子会」――元兵士と娘たち
元特攻兵の娘 
戦友会に参加する娘たち 
父の遺志を継ぐ娘 
「父に近づかないでください」 
戦史研究に熱心な息子たち 
亡父と「和解」した娘 

◆第12章「戦場体験」を受け継ぐということ
戦争前夜 
平和ボケ 
客室乗務員からビルマ戦の研究者へ
慰霊登山と拉孟 

◆最終章――非当事者による「感情の歴史学」 
手本はイギリス式オーラル・ヒストリー 
生きた歴史に触れる
「主婦研究者」もけっこうツライ 
歴史事実が歴史化されるとき 


あとがき